ラベル

2019年4月18日木曜日

家族介護者における主観的安寧感尺度の信頼性と妥当性の検討

これも昔の論文ですが、オープンアクセスになっていますので、貼っておきます。

安部幸志(2004)家族介護者における主観的安寧感尺度の信頼性と妥当性の検討. 健康心理学研究,17(1),47-55.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jahp/17/1/17_47/_article/-char/ja

○目的
 疾患を有する患者やその家族の心理的状態に関する研究では、これまで抑うつや不安などのネガティブな側面に注目されてきました。その測定尺度も、CES-DやHADS、STAIなどうつや不安を測定するものが多く開発されています。しかしながら、一部の研究では、(2004年頃はポジティブ心理学はまだあまり注目されていませんでしたが)そのような否定的状態だけでなく、肯定的状態に着目した研究がいくつか報告されています。例えばAffect Balance ScaleやLife Satisfaction Index-Zを抑うつ指標と同時に測定し、様々な要因が抑うつに与える影響を検討すると同時に、肯定的な状態に影響を与える要因を明らかにしています。
 一方、日本ではこの肯定的状態(Positive Affect)を測定するための尺度は少なく、特に介護者のようなストレス状況下における対象者に実施するための短時間で回答可能な簡便な尺度というものはほとんど認められていません。そこでこの研究では、上記のように、ストレス状況下における対象者であっても、肯定的状態、ここでは安寧(well-being)と定義しますが、その安寧な状態を短時間で回答できうる簡便な尺度を開発することを目的としました。

○尺度の使用について
 この尺度に関して、著作権は放棄致しませんが、研究・教育目的であるならば自由に使用して頂いて構いません。事前・事後の許諾なく使用して頂いて結構です。なお、それでも倫理委員会等の規定で使用許諾の書類が必要な場合は、出来るだけ迅速に対応致しますので、ご連絡下さい。

○使用方法、信頼性と妥当性
 この尺度は5項目で構成されており、信頼性はα=.91と高い内的一貫性が認められています。使用する際は単純和を算出し,「主観的安寧感」得点として下さい。
 検証的因子分析により、データへの高い適合性も確認しています(χ2(5)= 28.18, p< .001, GFI =.94, CFI = .96)。

尺度の詳細については、上記URLにある論文のPDFを参照して下さい。なお、実際に質問紙を作成する際のイメージとして、尺度項目を画像で貼付いたしますので、ご参考になれば幸いです。




2019年4月12日金曜日

Caregiving Stress Appraisal Scale

Caregiving Stress Appraisal Scale (CSA) is a simple scale for measuring family caregiver stress.

Abe, K. (2007) Reconsidering the Caregiving Stress Appraisal scale: Validation and examination of its association with items used for assessing long-term care insurance in Japan. Archives of Gerontology and Geriatrics, 44, 287-297.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16890304


This scale have high reliability and validity for measuring caregiver's stress.
The author have copyright for the production but it is free to use the scale for research and educational purposes.


PDF version is here(2022.2.19).

2019年4月11日木曜日

主観的介護ストレス評価尺度について

この論文はオープンアクセスにはなっていないのですが、ときどき使用される研究者がおられるので、一応書いておきます。

安部幸志(2001)主観的介護ストレス評価尺度の作成とストレッサーおよびうつ気分との関連について. 老年社会科学,23,40-49.
https://ci.nii.ac.jp/naid/40004307083

Abe, K. (2007) Reconsidering the Caregiving Stress Appraisal scale: Validation and examination of its association with items used for assessing long-term care insurance in Japan. Archives of Gerontology and Geriatrics, 44, 287-297.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16890304

このうち、老年社会科学の論文は、メディカルオンラインが使える環境にある場合は、ダウンロードが出来る可能性が高いです。Archives of Gerontology and Geriatricsは大学や施設が雑誌と契約していないとダウンロード出来ないと思われます。ただ、両方とも図書館等を通じてコピーの取り寄せは出来ると思います。

○目的
介護を要する高齢者における家族介護者の負担感を測定しようとする試みがいくつか行われています。有名なのはZaritの介護負担感尺度ですが、その後も様々な介護負担等の測定尺度が作られています。90年代初頭から心理・社会学系ではLazarusらのストレス認知理論に沿った研究が行われるようになり、「介護負担」ではなく「介護ストレス」として捉える研究が多くなってきました。ただ、「介護ストレス」として研究の中では扱っていても、もともと「介護負担」として作成された尺度を用いることが多く、ストレス認知理論における認知的評価としての機能を実証したものは数少ない状況でした。そこで、この研究では、既存の研究を整理し、理論に沿った機能を有する尺度を作成することを目的としています。

2001年の論文は尺度を作成し、因子分析や内的一貫性を検証した上で、ストレス認知理論に沿った機能を有するかどうか、実証したものです。
2007年の論文は、2001年の論文で作成した尺度の信頼性と妥当性を検証したものです。

○尺度の使用について
 この尺度に関して、著作権は放棄致しませんが、研究・教育目的であるならば自由に使用して頂いて構いません。事前・事後の許諾なく使用して頂いて結構です。なお、それでも倫理委員会等の規定で使用許諾の書類が必要な場合は、出来るだけ迅速に対応致しますので、ご連絡下さい。

○使用方法、信頼性と妥当性
 この尺度は12項目で構成されており、下位尺度として「社会的拘束感」と「身体的消耗感」の2つがあります。下位尺度はそれぞれ6項目ずつから構成されており、信頼性は「社会的拘束感」がα=.907、「身体的消耗感」がα=.906と高い内的一貫性が認められています。使用する際は下位尺度ごとに単純和を算出して下さい。また、因子間相関も高いため、「主観的介護ストレス」として単純加算した得点を使用することも可能です(安部、2001)。
 2007年の論文では基準関連妥当性を検討するために、Zarit介護負担感尺度との相関を算出しており、「社会的拘束感」が r = 0.71(p<.01)、「身体的消耗感」が r = 0.77 (p<.01)、主観的介護ストレス全体が r = 0.78 (p<.01)と、いずれもZarit介護負担感尺度と有意な相関が認められています。



2019年4月2日火曜日

介護マスタリーの構造と精神的健康に与える影響

昔書いた論文で、現在オープンアクセスになっているものをリンクしておきます。

安部幸志(2002). 介護マスタリーの構造と精神的健康に与える影響 健康心理学研究, 15(2),12-20.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jahp/15/2/15_12/_article/-char/ja

https://doi.org/10.11560/jahp.15.2_12
(上記二つは同じリンク先となるはずです)

○目的
 マスタリーとは、ある問題に対する解決能力やその予期に関する比較的安定した自己知覚です(Pearlin & Schooler, 1978)。この研究では、マスタリーを介護場面に適用し、介護者の個人的能力や介護行動に対する肯定的評価として測定するための尺度を開発することを目的としています。
 マスタリーとセルフ・エフィカシーの概念の違いですが、セルフ・エフィカシーはある行動を遂行する前段階の予期として使用されることが多いと思いますが、マスタリーは一定の行動をすでに遂行済みであり、その結果を振り返って自己評価を行った結果として捉えうるものと考えられます。

○尺度の使用について
 この尺度に関して、著作権は放棄致しませんが、研究・教育目的であるならば自由に使用して頂いて構いません。事前・事後の許諾なく使用して頂いて結構です。なお、それでも倫理委員会等の規定で使用許諾の書類が必要な場合は、出来るだけ迅速に対応致しますので、ご連絡下さい。

○使用方法、信頼性と妥当性
 この尺度は10項目で構成されており、下位尺度として「介護役割への達成感」と「介護に対する対処効力感」の2つがあります。下位尺度はそれぞれ5項目ずつから構成されており、信頼性は「介護役割への達成感」がα=.819、「介護に対する対処効力感」がα=.751と高い内的一貫性が認められています。使用する際は下位尺度ごとに単純和を算出して下さい。また、因子間相関も高いため、「介護マスタリー」として単純加算した得点を使用することも可能です。

 なお、論文のPDFでは第1因子の名称が表中は「介護自己達成感」、文章中は「介護役割への達成感」としていますが、文章中の「介護役割への達成感」が正しい名称です。

 妥当性に関して、検証的因子分析結果から因子的妥当性は確認されていますが、他の妥当性を推し量る基準との関連については、検討の余地が残されています。

尺度の詳細については、上記URLにある論文のPDFを参照して下さい。なお、実際に質問紙を作成する際のイメージとして、尺度項目を画像で貼付いたしますので、ご参考になれば幸いです





2019年4月1日月曜日

簡易死生観尺度(QIDA-8)の作成と信頼性・妥当性の検証

大学の紀要に新しい死生観尺度に関する論文が掲載されました。

安部幸志(2019). 簡易死生観尺度(QIDA-8)の作成と信頼性・妥当性の検証. 鹿児島大学法文学部紀要人文学科論集,86,1-7.

http://hdl.handle.net/10232/00030453

○尺度の説明と使用許諾について
既存の死生観尺度のエッセンスを抽出し、より簡便に使用できる尺度を作成することを目的とした研究です。この尺度に関して、著作権は放棄致しませんが、研究・教育目的であるならば自由に使用して頂いて構いません。事前・事後の許諾なく使用して頂いて結構です。なお、それでも倫理委員会等の規定で使用許諾の書類が必要な場合は、出来るだけ迅速に対応致しますので、ご連絡下さい。

○使用方法、信頼性と妥当性
この尺度は8項目で構成されており、4つの下位尺度があります。第1因子は「死への恐怖・不安」、第2因子は「死後の世界観」、第3因子は「追悼・供養意識」、第4因子は「解放としての死」です。使用する際は、下位尺度ごとに単純和を行い、尺度得点を算出して下さい。

 下位尺度には、それぞれ2項目ずつ含まれており、信頼性はα=.650~.796ですので、十分に使用可能と考えられる値となっています。再検査も行いましたが、すべての下位尺度においてプレ・ポストで有意な相関が認められました。第1~3因子はプレ・ポストで.70以上の有意な相関が認められたのですが、第4因子は.54とやや低い値が認められました。これは「解放としての死」概念が青年期においてやや変動しやすい傾向にあることを示していると考えられます。

 尺度の妥当性については、うつ・不安尺度と一部有意な相関が認められ、既存の死生観尺度と同様の結果が得られています。本尺度を利用した研究を今後展開していく予定ですが、妥当性についてはまだ検討の余地が残されています。

 尺度の詳細については、上記URLにある論文のPDFを参照して下さい。なお、実際に質問紙を作成する際のイメージとして、尺度項目を画像で貼付いたしますので、ご参考になれば幸いです。