尺度の日本語版を開発するという研究は、心理学分野ではよくある研究の一つだと思います。一方、研究者自身が一から概念を整理し、オリジナル版の尺度を作成する研究では問題にならないことが問題となってしまうことがあります。それは、同時多発的に日本語版を作成する研究が行われることによって、いくつもの日本語版尺度が存在してしまう、ということです。
この有名な例として、ローゼンバーグの自尊心尺度の日本語版が挙げられます。検索して頂くと実感して頂けると思いますが、数種類の日本語版尺度が作成され、その数種類に対する追試研究や妥当性の検証研究が行われており、どれがどれだか、非常にわかりにくい状況になっていると思います。
このような状況に陥る原因はいくつかありますが、正当な手続きを踏んで原著者に許可を得ていなかったり、すでに発表されたものを見落としていたり、ということが多いように思います。一昔前は、原著者に許可を得なくとも、論文として発表されている以上、おおやけにされているものと見なして研究を進める、という立場を取る研究者が多かったので、ある意味仕方なかったのかもしれません。
現在では、オリジナルの著者、作者の権利を保護する意識が高まり、またインターネットの発達により文献検索が容易になったため、上記のようなことはあまり見られなくなったように思います。
しかしながら、現在に至っても、残っている問題はあります。それは、正当な手続きを踏んで原著者に許可を得ているが、まだ学会や誌上で発表していない、という段階のものです。
これは結構やっかいな問題で、原著者に問い合わせなければ、日本国内で誰が許可をもらっているのかわからないですし、たとえ許可をもらっている人が判明しても、学会や誌上発表をしていなければ、自らの研究では使用することが困難になります。
しびれを切らして、原著者に無断で日本語版を作成して研究に使用すると、それこそローゼンバーグの自尊心尺度の二の舞になってしまいます。
プレレジのように、日本語版の翻訳許可を得た人が、どこかに登録して公開すれば、これらの問題の発生率は低くなると思うのですが、今のところあまりそのような状況にはなっていないと思います。
そこで、とりあえずは、自分だけでも、日本語版の翻訳許可を得た尺度をここで公開したいと思います。すべての尺度は、学会あるいは誌上発表後にオープンにする予定ですが、それまで待てない、すぐに調査に組み込みたい、という場合は連絡して下さい。すべての尺度について、少なくとも日本語化は終了していますので、お渡しすることは可能です。ただ、まだ発表していない尺度については、こちらが発表する前に学会等で発表されるとややこしくなりますので、発表予定がある場合は、その時期を相談させて下さい。
Abe, K. & Tomiyama, K. (2024). Development of a Japanese Version of the Brief Ageing Perceptions Questionnaire and Its Validity and Reliability. Journal of Ageing and Longevity, 4(3), 200-208.
https://www.mdpi.com/2673-9259/4/3/14
Liewらが作成した6項目版MM Caregiver Grief Inventory。現在日本語化は終了し、調査進行中。発表は次年度になる予定。
KahnによるDistress Disclosure Index、ネガティブな経験の自己開示尺度。現在は日本語化および調査が終了したところ。発表は次年度になる予定。
Voormolenらによるウェルビーイングの測定尺度。現在日本語化を終了し、調査1を終え、調査2が進行中。発表は次年度になる予定。
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