ラベル

2024年10月24日木曜日

なぜBSFC-sの日本語版の作成をしたのか?について

 今回、BSFC-s(家族介護者用負担感尺度短縮版)の日本語版を開発し、論文として発表しました。ここで疑問に思う方もおられると思うのですが、なぜ、今になって介護負担感尺度を作成したのか、について説明したいと思います。


もともと、介護負担感はZarit介護負担感尺度が有名ですし、もっとも利用頻度が高い尺度だと思います。しかし、その後介護者心理の研究がストレスプロセスモデルを用いたものが増えるようになり、Zaritの尺度だとストレスプロセスモデルを構成する他のストレス反応等との概念的重複があるため、新たにいくつかの尺度が開発されてきました。

以前、2001年に主観的介護ストレス評価尺度を開発したときも、そのように考えて2因子からなる尺度を作成しました。

その後、研究が進むにつれ、ストレスプロセスモデルにおいて、介護負担感や介護ストレスに対する認知は複数の要因があったとしても、一つにまとまることがわかってきました。つまり、私が作成した尺度であっても、2因子に分けて測定する必要がなく、1因子の「介護ストレス」として捉えた方が現実に即していると思われます。

具体的に、研究上ではどのような意味かというと、介護負担や介護ストレスの複数の因子のうち、どの因子がもっとも重要か、という分析を行うことはあまり意味がないということです。それよりも、全部まとめて分析し、そのまとまった介護負担感や介護ストレス全般に対し、軽減効果や増幅効果を有する要因を見つけ出す、という研究が社会的には求められていると思います。


そう考えると、昔作成した主観的介護ストレス評価尺度をこのまま自分の研究で使用し続けることに少し抵抗を感じるようになりました。近年、コロナ禍で対面での学生を連れた活動が難しくなり、ウェブ調査をするようになったのですが、そこでせっかくなら介護負担の新しい尺度を作成してみようと思い立ったわけです。

介護負担の新しい尺度について検索すると、もちろんたくさんの検討すべき尺度が挙げられるのですが、その中でBSFCという尺度が気になりました。短縮版なら項目数も少ないですし、ヨーロッパを中心として、様々な国でローカルバージョンが作成され、ほとんどすべてがフリーで使用できます。私も自分の尺度は研究のためならできるだけフリーにしたいと思っていましたので、このBSFCの作者に連絡を取ったところ、使用許可をいただくことができました。


介護負担の研究は、現在様々な尺度があり、どれを使用するのかというのは慎重に検討すべき事項です。BSFCのように、単純にすべての項目を合算し「介護負担感」を測定したいというケースもあるでしょうし、下位尺度に興味があるケースもあると思います。個人的には、ストレスプロセスモデルの検証については、もうそろそろ終わりにして、心理だけでなく、医療・福祉領域もストレスプロセスモデルを前提とした、介護負担感を中長期的に軽減する要因を明らかにする研究が増えてほしいと願っています。


以上

2024年10月22日火曜日

Validation of the Japanese version of the Burden Scale for Family Caregivers short form

Asian Journal of Gerontology and Geriatricsのホームページにも論文が掲載されました。

PDFもダウンロード出来ます。巻・号はもう決まっているみたいですが、ページは未定のようです。

以下のURLはearly online releaseページのもので、半年ぐらいすると他のページにPDFのURLが移動する可能性がありますのでご注意下さい。


 https://www.ajgg.org/en-early_online_release.html


https://www.ajgg.org/image/module/early_online_release/2024-677-oa.pdf


この論文は、主にヨーロッパ諸国で最近使用されることが多くなっている、Burden Scale for Family Caregivers (BSFC)の短縮版を日本語化し、その信頼性と妥当性を検証したものです。

分析の結果、BSFC短縮版(BSFC-s)は日本語においても、高い信頼性と妥当性が確認されたため、国際比較などさらなる研究への発展が期待できる尺度であることがわかりました。

このBSFC-sについては、原著者Graesselらも、著作権は放棄していませんがフリーで公開しており、研究や教育、臨床でのアセスメントについては無料で使用できるようです。

こちらの日本語版も、原著者に倣い、フリーで公開したいと思いますので、研究、教育、臨床においての使用については、許諾なしで使用して頂いて構いません。


尺度項目のイメージはこちらです。


尺度項目のPDFはこちらです。実際に使用する時は、こちらを参考にワードやエクセルで質問紙を作成して下さい。得点方法はシンプルに全項目を合算するだけです。
大学の共有ドライブにファイルを置いていますので、大学側のシステム変更等でダウンロードできなくなる可能性があります。その場合、お手数ですが、上のJPEGを参考にして下さい。


2024年10月7日月曜日

海外ジャーナルからのお誘いメールを整理してみました

プレプリント論文の投稿後、海外ジャーナルからの投稿へのお誘いメールが多いため、一度整理してみました。

各雑誌の名前と発行している出版社、APCも参考のために一覧にしてみます。

どの雑誌や出版社が良いのか悪いのかは、分野によって違いますので、ここでは判断いたしません。単にデータとして整理しているだけとお考え下さい。


整理してみると、Opastグループからのメールが多いですね。APCは高い雑誌が多いのですが、一部信じられないぐらい安い雑誌がありますね。


大学の紀要の出版にかかる費用も0円ではなく、数万円かかりますので、それを考えると廉価にオープンアクセスにしてDOIをつけて発行してくれる雑誌は、投稿先として悪くない、、、のかもしれません。


なお、これ以外にも、論文の査読依頼が1週間で3本来ました(すべて分野違いでしたが)。普通の雑誌に論文が掲載されるよりも、こういった反応が多くて驚いています。若手だったらプレプリントをうまく利用することで何かチャンスを得ることができるかもしれませんね。


投稿へのお誘いがあった海外ジャーナル一覧


2024年10月5日土曜日

Aging Medicine and Healthcareに論文がアクセプトされました

Aging Medicine and Healthcareという雑誌に論文がアクセプトされました。

タイトルは以下の通りです(印刷前に校正が入るので変更の可能性あり)


タイトル:

Changes in Japanese older adults' frequency of going out during the COVID-19 pandemic


印刷される巻号やページが決まりましたら、またお知らせいたします。

2024年10月2日水曜日

BSFC-s日本語版の論文がアクセプトされました

BSFC-s日本語版の作成を行った論文がアクセプトされました。

タイトル・雑誌名は以下の通りです。


タイトル:

Validation of a Japanese version of the Burden Scale for Family Caregivers short form


雑誌名:

Asian Journal of Gerontology & Geriatrics


巻・号が決まりましたら、また詳細を書きたいと思います。