ワシントンDCで開催されたAPA2023(2023年アメリカ心理学会大会)に参加してきました。APAの大会に現地で参加するのは今回が初めてでしたので、感想などを書いてみたいと思います。
1. 全体の雰囲気
APAはGSA(アメリカ老年学会)と違って、とにかく雰囲気が若い、という印象です。発表者も若くて、ポスター発表者はPhDを持ってないどころか、修士も持っていない、学部を卒業したばかりの修士課程の院生が多かったように思えました。発表している研究内容も、かなりまとまったものもあれば、まだ荒削りの内容のものも多く、修士課程の院生が学会デビューをするのにちょうど良い雰囲気だったように思います。
研究分野では、もちろん日心の大会のように様々な分野があるのですが、日心よりもカウンセリング・サイコロジーの分野からの発表が多い印象でした。Licensed psychologistのための資格更新に必要な単位も学会参加や発表で得ることができるので、日心よりもカウンセリング分野からの発表が多いのかもしれません。
あと、これは次に参加を検討している人に伝えたいことなのですが、発表やシンポジウムのキャンセルが多いので気をつけて欲しいです。私は初日の朝8時からのシンポのために、ジェットラグで苦しみながらも早起きして参加したところ、いきなりキャンセルでした。3日目のシンポも、日本にいるときから見ようと思ってブックマークしていたのに、当日会場に行って初めてキャンセルと告げられました。ウェブなどで早めに教えてくれれば他の発表を探せるんだけどなぁ、とブツブツ言いたくなりますが、そういうものだと諦めた方が良さそうです。
2.ポスター発表の手順
今回はポスター発表だったのですが、在籍責任時間は50分でした。今まで経験した他の学会と異なり、ポスターを貼る時間、撤収する時間がかなりタイトで、午後2時スタートだったにも関わらず、午後1時55分過ぎまで前のポスター発表を行っており、急いで貼らないといけない状況でした。
なお、午後2時45分ぐらいから、次のポスター発表者がやってくるので、撤収作業も急いでする必要がありました。他の学会だとポスター貼ったままどこかに行ってシンポジウムとかを見学してる人が結構いるのですが、ここはそういうことが出来ない感じです。
ポスターでの議論は、一通り回って話をする座長みたいな方と少し話をした後に、周囲の発表者と情報交換をするような形式でした。ただ、私も隣の台湾からの発表者も、アジア人なので英語が苦手だと思われたのか、アメリカ人からあまり積極的には話しかけられませんでした。
3. 海外からの参加者
GSAと比べると、今回のAPAでは海外からの参加者数はかなり少ない印象でした。まだコロナの影響があるのか、それとももともと海外からの参加が少ないのかは不明ですが、国際性はあまり感じられない状況でした。
4. アメリカでの研究トレンド
アメリカ社会のことはニュースなどである程度理解しているつもりでしたし、昨年GSAに参加した際に研究トピックとして取り上げているのをいくつか見ましたので、おそらく人種問題や性的マイノリティーの問題に関する研究が一定数あるとは思っていました。しかし、その想定以上に、これらのトピックに関する研究が多く、心理学に関する知識以上に政治や国際関係の知識が求められるため、議論に追いつくのに必死でした。また、我々外国人から見ると、アメリカ国内での支持政党によって明らかに研究目的や結果が異なるであろう研究も散見され、ちょっとそこにはノータッチでありたいと思ってしまいました。
また、今回は老年心理以外にも、抑うつや自殺問題に関する研究も見てきましたが、自殺問題は若年世代を対象とした研究や介入の報告が多かったように思えました。単にたまたまそのセッションを見ただけかもしれませんが、中年以降の自殺よりは若者の自殺予防に関する報告が多い印象でした。
5. まとめ
自分の研究分野における最新の研究を知るためには、やはりAPAよりもGSAの方が適しているように思いました。一方、心理学全体の次のトレンドを知ることや、大学の授業で一般的な話をするためには、APAに参加する意義はあるように思いました。ほとんどのポスターはオンライン参加すれば見ることができますので、今後は上手にオンライン・オンサイト参加を使い分けていきたいと思います。
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